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2012年10月14日

「あるいとう」神戸・異人館街発青春コミック 背景巡りも人気

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 神戸の観光地・北野異人館街を舞台にした少女漫画が、連載中の雑誌「マーガレット」(集英社)で人気を呼んでいる。題名は、神戸弁で“歩いている”を表す「あるいとう」。阪神・淡路大震災で大切な人を亡くした女の子が明るく強く生きる日常を、坂の街の美しい風景とともに華やかに描き出す。

主人公と同じポーズで異人館街を散策する女子高校生=神戸市中央区北野町

主人公と同じポーズで異人館街を散策する女子高校生=神戸市中央区北野町

 先月末、兵庫県出身・在住の作者、ななじ眺(ながむ)さんが北野のアトリエで公開制作を行った。抽選で選ばれた80人が人気作家の筆の運びに注目し、制作秘話に耳を傾けた。抽選に漏れたファンも、神戸北野美術館で開かれた原画展を訪れ、作品の舞台となっている異人館街を散策した。

 阪神・淡路大震災では神戸の親族宅が全壊したというななじさん。被災者の心の傷や鎮魂の風景など、少女漫画の世界では敬遠されがちな重いテーマも含まれるが、時間をかけて編集者と神戸を歩き、住民とも交流して原案を練り上げ、東日本大震災直後の昨年4月に連載を開始した。

 主人公の「くこ」は、父親と2人で北野に暮らす女子高校生。持ち前の明るさの裏には、生まれた直後に全壊した自宅で自分を助け、犠牲になった母親への複雑な思いが消えずにいる。一方で、同年代の男の子たちとの微妙な恋愛模様も描かれており、少女漫画の「王道」からは外れずにストーリーは進む。

 漫画家歴19年、海外でのドラマ化作品もあるななじさんだが、連載開始直後、脳梗塞(こうそく)で倒れた。命に別条はなかったが大事を取って休載した。それでも人気作家の復活をファンは待ち望み、今年3月に再開した。7月には単行本第1巻が出版され、第2巻は今年中に出版される予定だ。

 休載中、病み上がりの身ながら東北の被災地を訪問し、子どもたちのために「ふれ合いの会」を実施。また77人の漫画家仲間とチャリティー冊子を制作し、売り上げの全額を寄付するなどしてきた。

 ななじさんは「駆け出しの漫画家だった17年前、兵庫県内に住みながら、何もしてあげられない無力感にさいなまれた。だから今、傷付いた神戸のことも覚えていてほしい」と話す。

 公開制作に当選して参加し、小学校のころからファンだったという大阪市の女子高校生(17)は「こんなきれいな街にもつらい時があったことを、作品で初めて知りました」と、新たな視点を携えて異人館巡りに歩き出した。

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