お知らせ/一覧

トップページ  > サブカルニュース/一覧

2013年12月10日

第18回アニメーション神戸授賞式(下) 新海誠VS荒木哲郎

Share on Facebook

授賞式の後、新海監督と荒木監督による「受賞者トークショー」が開かれました。 これはがまた、面白かったです。 進行役は岩崎・南コンビが務めるのですが、 新海監督の話の進め具合がうますぎて、後半は進行役のお2人がほとんどうなずくだけの状態でした。

最初に新海監督が、「荒木監督とは初めてですが、自分の作品に荒木監督の奥様が参加されたことがある」と発言。 「荒木さんがどうやって奥さんを口説いたか知ってます」 と続けて、会場の空気をいきなりつかんでしまいます。

■「とにかく雨を描こう」 (新海監督)

『言の葉の庭』を作ろうとした動機については、 「とにかく雨を描こう」だったそうです。6月の雨を背景に…というより、雨そのものが主人公の一人だったんですね。 “もっとも雨を美しく描いた作品”と言われる理由も納得です。

また、新海監督はロケの際、かなり写真を撮られるんですが、 そのまま絵にするのではないそうです。 そのことを荒木監督が

「写真の中から美しい部分を取り出す」「そこに美しいものがあると僕たちに教えてくれる」と指摘。

例えば、雨上がりの信号機に乱反射する太陽の光が美しいことなど、日常生活で見落としているようなものを気付かせてくれると話し、「まさに新海センスを感じる」と絶賛します。 賛辞を贈られた新海監督は「世の中の綺麗なところしか見てない、と批判されるんです」と 少し照れていました。

『言の葉の庭』の音楽について、大学時代に文学少女たちに一番人気だった曲を使った、などと、学生生活の一端が垣間見えたり、どうして悲恋ばかり描くんですか、という質問には

「すげーうまくいってるんだ。彼女と!…という話なんか聞きたくないでしょ」

とテンポよく返すなど 観客はどんどん新海監督の話に乗せられていきます。あのあと2人はどうなるの?という問いには 「うかつには言えませんが『ダ・ヴィンチ』(連載小説)で少し、その先のことも書いていきます」。 続いて「実写ならクサくなる演出もアニメなら出来る」などアニメの利点を語っていました。

■「原作の隙間を埋める楽しさ」 (荒木監督)

新海監督によると海外のアニメイベントは『進撃の巨人』一色だったそうで、 ファンらによるコスプレ(半裸の巨人?)などテンションの高さ、その人気ぶりを実感したとか。(「漫画を読まない文化の国でも、アニメが切り開いている」とも)

監督を引き受ける前から『進撃の巨人』を読んでいた荒木監督。 アニメの方向性に迷うことはなかったそうです。 原作者の諫山先生と会うのは楽しく、進撃の世界観をたっぷり聞くことは嬉しかった、と話す一方で、

「作品の裏側まで知ってしまい、純粋なファンでいられなくなった」「寂しい」と ファンとしては辛いという心境を語ってくれました。

作品に登場する「立体起動装置」は人気のアイテムですが、 原作にその原理は詳細には書かれていません。どういう仕組みで動くのか…などと、 「原作の隙間を埋めていく作業は楽しかった」と話します。

ところで、『進撃の巨人』は巨人が人間を捕食する(食べる)場面が頻繁に出てきます。 深夜アニメとはいえ地上波でオンエアするにはどうすればいいのか。 原作で描かれる残酷な描写と、放送コードの調整の問題は大きかったと思います。

「コア(ディープ)でありつつ、オープンでもある」。

作品は、さまざまな制約の中で最高の表現に挑戦する作業でもあったんですね。

『進撃の巨人』の人気、評価が高まるにつれ、 スタッフたちへの厳しい注文も 「歴史に残るんだぞ!」と言いやすくなった、という話も披露してくれました。 「―巨人は、まだまだやりたい」とも。

左から荒木監督、新海監督

対談の中で新海監督はたびたび「インディーズ」という言葉で、自分の活動を説明します。 有名な方から漏れる言葉に、少し違和感もありましたが、 監督から脚本、演出、作画、編集など多くの作業を一人でされていることを思うと 確かに、大手制作会社、テレビ局でする仕事とは、いろいろな点で違うところがあるんだろうな、と思いました。新海監督から、一人で作り上げていく自由さと困難さ楽しさを感じました。 インディーズの巨匠です。 逆に人気漫画を原作に持ち、人気アニメの監督として指揮を執る荒木氏からは、その醍醐味とともに、公共放送の縛りなど、新海監督とは別な面での葛藤があると感じました。 クリエイター同士の対談は(ちゃんと吸収できませんでしたが)、わくわくできました。

■吉田仁美ミニライブ

この後、授賞式にもきてくれた吉田仁美さんのミニライブが行われました。 『ドキドキ!プリキュア』の前期エンディングテーマ「この空の向こう」と後期エンディングテーマの「ラブリング」を披露。 観客に「L・O・V・E」の降り付けを指導し、一緒に楽しみました。

最後に実行委員長の神谷明さんが閉会の辞で 「多くの方の支援があって、アニメに携わる者が頑張っていける」 と述べられていました。 今回、賞を受章した多くのクリエイターさんたちも同じようなコメントを残されています。 昔から言われるように、作り手側だけでいい作品が出来るのではなく、 いい作品はいい観客が育てるのかな…などと思いながら会場をあとにしました。                  (I・M)

 

第18回アニメーション神戸授賞式(上) 一般作品の表彰も
第18回アニメーション神戸授賞式(中) アリス・ナインが祝福

関連記事: